traditional kimono 成人式の振袖で学ぶ着物の伝統と魅力
知っておきたい着物の知識
「和文化を継承する為に、着物の魅力を創造し続ける」ことを企業理念に掲げているキモノハーツでは、皆さんに日本の伝統文化である着物を着ていただく機会を作るために、様々なサービスを行っています。
オリジナル振袖コーディネートブランド「コーデレーベル」も、皆さんに着物を着ていただくための工夫のひとつ。
古典の型に固執せずに、和装の「今」を創造し続けています。
但し、伝統を踏まえた上での「今」でなければ、おしゃれな「崩し」ではなく、品のない「外れ」になってしまいます。
キモノハーツは伝統を踏まえた上で、新しいおしゃれを提案していきたいと考えています。
日本の伝統に興味を持つことは、自分を取り巻く日々の暮らしをより愛おしいものにするための知恵とも言えましょう。
着物の持つ素晴らしさを知れば、お召しになられた時の清々しさもいっそう格別なものになるに違いありません。
振袖の由来
洋服にカジュアルなジーンズからフォーマルなタキシードがあるように、和装にもT.P.O.に合わせた着こなしがあります。
いくら好きなファッションでも冠婚葬祭の場にジーンズで参加するのは、その場の空気もおかしな感じになってしまいます。
冠婚葬祭に出席する時の女性の正礼装は、洋装ならばアフタヌーンドレスやイブニングドレスが一般的です。
和装では既婚者ならば黒留袖もしくは五つ紋の色留袖、未婚者ならば振袖もしくは五つ紋の色留袖とされ、振袖は和装の最高位の礼装(第一礼装)です。
【参考】和装の種類
1)第一礼装
【礼服】
黒留袖(ミセス)・・・家紋5つ/柄は下部のみ
振袖(ミス)
花嫁・・・白無垢/色打掛/引き振袖
【喪服(葬儀)】
正喪服・・・喪主、ご遺族、親族が着用。家紋5つ/黒
準喪服・・・喪主以外のご遺族や親族、友人が着用。家紋1つまたは3つ/無地
2)第二礼装
色留袖(ミセス)・・・家紋1~5つ/柄は下部のみ
訪問着(ミセス)・・・縫い目をまたいでも柄が繋がっている絵羽模様。柄に合わせた裏地
3)略礼装
付け下げ・・・縫い目をまたいで柄が繋がっていない。柄は全て上向きで下から上に向かって小さくなる
4)おしゃれ着
色無地・・・家紋を入れると第二礼装になる
小紋・・・着物全体に柄があり必ずしも上向きではない
紬(つむぎ)・・・紬糸の状態で染めてあり(先染め)織る段階で柄を表現する。丈夫なため普段着として重宝されたが、手間と技術の必要な高級品でもある
振袖の由来は平安時代から続く子供用の小袖です。
男女を問わず体温の高い子供たちのために、袖の穴(振り八つ口)から熱を逃がす仕様になっていたようで、男子は17歳の春、女子はミス、ミセスに関わらず19歳の秋に袖を短くして穴をふさぐ風習だったそうです。
今の振袖と呼ばれている着物の形状は江戸時代頃から始まりました。
江戸時代の大衆文化の発展と共に、女の子に舞踊を習わせる家庭が増え、踊る時の身振りを美しく見せるためにどんどん袖が長くなっていったとも云われています。
そこに意味が加わり、現代風で言うならば「恋愛運を高める」と云われている小指の指輪(ピンキーリング)のように、「恋人募集中」のメッセージの役割も担うようになっていきました。
江戸時代の武家階級の婚礼では、小袖や振袖の上から羽織る打掛に比べて動きやすい(裾の長い)引き振袖が着られるようになり、明治時代から昭和初期になると富裕な商人たちの婚礼で一般的な花嫁衣裳となりました。
令和の今でも振袖は白無垢や色打掛に次ぐ格調高い礼装として着られています(引き振袖ではなく、成人式で購入してもらった思い出深い振袖を披露宴で着る花嫁さんもいらっしゃいます)。
花嫁といえば文金高島田をイメージする方も多いでしょう。しかし最近は最近は時代に合わせた洋風のヘアメイクや、おしゃれな小物と合わせた個性あふれるコーディネートも盛んになっています。
日本には古来より「ハレ(晴れ、霽れ)」と「ケ(褻)」という考え方があります。
「ハレ」は祭礼、元旦や節句などの特別な日、「ケ」は普段の日々を指しています。
「ハレ」の日には立ち居振る舞いや言葉遣い、食事や衣装などを明確に区別し、心も晴々しく過ごします。
成人式や結婚式などは、自分が主人公になって周りに感謝を伝えることができる「ハレ」の日。
自分らしさを着物で表現して、人生の大切な思い出にしましょう。
見立て=インスピレーション
和装は基本的に「自然の風景」を身にまとい楽しむことが前提なので、コーディネート全体に物語性を含ませるのは、とても大切な要素です。
さらに色使いも洋服ではあまり見られないくらい百花繚乱の大地のように多彩です。
色の合わせ方についても、洋服ではあまり馴染みのない補色の組み合わせさえ、効果的なアクセントになることがあります。
日本に古くから伝わる知的な遊びに「見立て」というものがあります。
例えば枯山水の庭のように、大きな石を富士山に見立て、その周りに小石を使って川の流れを再現しているのもそのひとつです。
小さな盆栽を大きな古木に見立てたり、茶道で茶碗の中に風景を見立てたり、昔の人たちは頭の中で時空を超えて自由自在に遊んでいました。
着物の柄にはそれぞれ意味があって、まったく無視して自分の好みだけで自由にコーディネートしてしまうと(江戸の言葉で)「キメ過ぎは野暮」になってしまいます。
それを上手に「粋(いき)」や「はんなり」に崩すのには「見立て」のユーモアやシャレといった遊びが重要になってきます。
例えば成人式の場合であれば、人生の新しい旅立ちということで方位磁石のキーホルダーを「根付」の代わりに帯に飾ってみたりするのも日本の伝統的な「判じ物(謎解き)」という遊び心です。
江戸時代の粋を表現する「江戸小紋」というデザインもあります。
離れていると無地に見えるのですが、近付いてよく見ると繊細な模様が染められていて、地味な装いと思いきや、実は凝っているという粋なおしゃれです。
これもこの着物の良さが解るほど仲良くお近づきになったという艶っぽいメッセージも含んだ「判じ物」のひとつなのです。
着物の色や柄にはそれぞれに日本の文化に根差した意味があります。
それを知った上で、自分なりの「見立て」でイメージを膨らませ、「自分だけの物語」をコーディネートできるのが着物の醍醐味といえましょう。
【参考】
1)振袖の色
赤:太陽、神聖、厄除け
ピンク:優しさ、感謝、愛、可憐さ
緑:平和、癒し、調和
青:清潔、信頼、知性
黄:豊かさ、明朗さ
紫:高貴、上品
白:清楚、純潔
黒:神秘性、気品
2) 振袖の柄
松:健康、長寿
竹:成長
梅:高貴さ、上品、忍耐
菊:高貴さ、安らかな心、邪気を払う
百合:高貴さ、純潔
牡丹:高貴さ、美しさ、健やかさ
薔薇:情熱、愛情(赤)・清純さ(白)・奇跡(青)
桜:繁栄、豊かさ
椿:生命力、優美、厄除け
菖蒲:長寿、繁栄、厄除け
橘:長寿、豊かさ
鶴;亀:長寿、繁栄
蝶:長寿、飛躍
御所車:繁栄
熨斗:繁栄、厄除け
貝桶:繁栄
成人式の歴史
「成人」を辞書で調べると「身体的、精神的に十分に成熟している年齢。法的には、単独で法律行為が行えるようになる年齢」ということになります。
2022年に(選挙権年齢の引き下げに伴って)成人年齢を18歳に引き下げる法律が施行されたことは記憶に新しいと思いますが、成人式の対象年齢は各自治体によって決めることになっていて、受験や就活との兼ね合いなど現実的な事情を鑑みて、ほとんどの自治体では「20歳のつどい」など名称の変更のみで、内容の変更はありませんでした。
世界的に見ても法律で20歳を成人の基準にしている国は4か国(タイ/中華民国/ニュージーランド/モロッコ *2022年現在)程度で、ほとんどの国では18歳から成人と定めています。
実は日本では奈良/平安時代から成人を迎えるに際して「元服(げんぷく)」や「裳着(もぎ)」と呼ばれた儀式が存在し、名前や髪型、着る服までを大人仕様に変えたようですが、その年齢は12歳から17歳と地域や階級によってばらばらでした。
成人式が現在の形になったのは意外に最近で、昭和21年(1946年)埼玉県蕨市で行われた「青年祭」だと云われています。
「青年祭」開催の目的は、第二次世界大戦敗戦後の暗い世相の中で、次代を担う若者たちに明るい希望を抱いてもらえるよう励ますことだったと記録に残っています。
平成27年(2015年)に日本で新成人となる人口はおよそ126万人で人口の約1%を占めています。
日本でもっとも規模が大きい横浜市の「二十歳の市民を祝うつどい」(平成26年)では約2万人の新成人たちが横浜アリーナ(横浜市港北区新横浜)に集結し、コロナ禍や災害による暗い世相の中でも、未来に向けた希望や夢に胸を膨らませていました。
キモノハーツでも横浜アリーナ内にあるスタジオでたくさんの新成人のお手伝いをさせていただき、新成人の皆さんやご家族様のたくさんの笑顔を拝見することができました。
実は世界を見ると、日本のように全国規模で成人をお祝いする文化はほとんどありません。
それどころか成人の通過儀礼として過酷な試験に合格しないといけない国もあって、若者たちが華やかな服装で楽しそうに集まり大人たちに祝福される日本の成人式は、憧れや驚きをもって注目されています。